恋が都合よく落ちてるわけない
仁志さんからは、何も言って来なかった。
連絡してきたら、そのままいつものように、言い返そうと思っていた。

仁志さんだって、素直に私がデータを渡すとは思ってないはず。

朝一番に文句をいいにくると思ったのに。
何も入ってないのは、開ければ一瞬でわかるはず。

いろいろ理由は思い浮かぶ。

須田さん忙しだろうから、他にも仕事抱えてるし、連絡だって元からしてこなかった。

それより、どうでもいいんじゃないの私の事なんか。




「いやぁあああ~」


ええっ?給湯室から聞こえたような。

なんだ?

私は、給湯室をのぞいた。
「どうしたの?」


「ああわあわあわ、ちょっと本物来ちゃったじゃん」


今日は、通りすがりに私の顔を見て、
やたらこの反応が起こる。


昼休み前に、

「あんたさあ、昨日、皆が帰った後、
会社で、嫌がる落合君を襲ってたって、本当?」
実加が真面目な顔で教えてくれた。

実加は、こういう時、ひどい内容だからって、オブラートに包んだりしない。


「何?それ」


「私が襲った事になってんだ」


「ええっ?ちょっと、まさか、
それ以外全部事実?」

どういう判断よ、それ。



「それ以外の以外には、
何が含まれるのよ」


「それは、いろいろ。
あんたが襲ったって言うのは
共通してるよ」


「はあ?私が襲う?
何で落合君を襲うのよ」


「奏ファンにすれば、傷つけられたわけじゃん、そうでもしないと収まりつかないんじゃない」
たまにイラつくけど、これは実加の意見ではない。


「じゃあ、奏ファンに言っておいてよ。
奏をしっかりつかまえておいてよって」

ああ…実加ったら、伝える方もそのまんまダイレクトだった…

「実加、ちょっと今の待って!」
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