~Still~
女性司会者は言葉を失い、硬直した。

颯太はそんな司会者に優しい視線を向けると、まるで『大丈夫』というように優しく微笑んだ。

「失礼。青山さん」

颯太がステージの裾に視線を送ると、秘書の青山奏が、琉球ガラスのぐい飲みを乗せた盆を颯太に手渡した。

「雅社長。これはうちの、女杜氏の皆さんが丹精込めて作った酒です。是非飲んでください」

雅丈一郎は、颯太の差し出したぐい飲みをチラリと見た。

「結構。先ほども申し上げた通り、わたしは、奇をてらうのを好まん」

エレナは、無意識に両手をギュッと胸の前で握り締めた。

颯太が心配でならなかった。

颯太は、自分と雅丈一郎との間に置かれた小さな丸いテーブルに持っていた盆を置くと、柔かな口調で話し出した。
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