~Still~
「エレナさん」

返事はない。

颯太はそっとドアを開けた。

ベッドメイキングをしているエレナが目に留まる。

「……何してるんですか?」

「…掃除」

エレナは颯太を見ずに答えた。

本当はもう少し早く片付く予定だったが、エレナは理恵が帰った後暫くの間、床にへたりこんでしまっていた。

胸を撃ち抜かれたような痛みと、騙されたという悲しみと、あの女の鼻をつく態度。

素人相手に、性悪女を演じた罪悪感。

それら……いや、それ以上の嫌な物も、まとめて襲いかかってきたようで、エレナは耐えきれなかったのだ。

颯太はエレナの表情から、なにかあったとすぐに理解できた。
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