~Still~
「行くわよ」

辛うじてまだ女の咲希が、エレナの眼を見た。

エレナが小さく頷くと、咲希は大きなドアをそっと押した。

途端に、柔らかな光と賑やかな店内の様子が眼の前にひろがる。

咲希は、大股でカウンターを目指した。

「神谷社長はいらっしゃいますか?」

「失礼ですが、どちら様でいらっしゃいますか?」

咲希は澄ました顔で答えた。

「城田エレナです」

げっ!

バーテンダーがバックヤードに引っ込むや否や、やっと咲希に追い付いたエレナは、思わず彼女を睨んだ。
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