午前0時の恋人契約
「た、貴人さん……」
「悪いな、待たせたか」
「いえ、私が早く来すぎただけです」
貴人さんは、男性の姿が見えなくなったことを確認し、肩から手を離す。
よくよく見れば今日の彼は、七分丈の白いシャツに、グレーのTシャツ、黒いパンツと、初めて見る私服姿。
いつものかっちりとしたスーツ姿とは印象が違く、年齢より少し若く見える。いつもは隠れている首筋と鎖骨がちらりとのぞき、つい視線が向いてしまう。
ま、眩しい……!
スーツの時でも充分かっこいいけれど、私服姿でもそのかっこよさは変わらない。
スーツの時より体細いなぁ、でもほどよく筋肉がついていて……って、なにまじまじと見てるの、私!
ひとり心の中で叫ぶと、慌てて目をそらす。そんな私に、貴人さんは不思議そうな顔をした。
「どうかしたか?」
「い、いえ、私服姿が新鮮だなぁと、思いまして……」
「そうか?」とよくわからないといった様子で歩き出すその足に続いて、私も紺色のパンプスで歩き出した。