午前0時の恋人契約
「今日は特に行き先は決めてないし予約もしてないけど、どこか行きたいところはあるか?」
「あっ、じゃあ今日桐子さんにお会いした時にオススメしてもらったお店に行きましょう!」
丁度、先ほど話の流れで桐子さんから『一度貴人と行ってみなさい』と教えてもらったお店がある。
手書きのメモに書かれたざっくりとした地図と飲食店、という情報しか教えてくれなかったのが少し怖いけれど……折角教えてもらったのだから行ってみたい気もする。
そうバッグからメモを取り出す私の隣で、貴人さんの顔は怪訝なものとなった。
「桐子って……お前、あいつと会ったのか!?」
「はい。昼間偶然行きあって、ついさっきまでお茶してたんです」
「いつの間にそんな仲良くなったんだよ……」
あ、そういえばそもそも桐子さんと会ったことを言っていなかった。
それにしてもすごい嫌がり方……。まぁ、貴人さんと桐子さんって正反対な性格っぽいし、雇用主と労働者という立場でもあまり気が合わないのかもしれない。
桐子さんと会ったの、黙っておくべきだったかな……でもそれもなんか、隠し事してるみたいでいやだし。
うーん、と考えながら人混みを歩くと、貴人さんは恐る恐る口を開く。