午前0時の恋人契約
「……あいつ、余計なこと言ってなかっただろうな」
「へ?あー……」
余計なこと、……って、貴人さんがレンタル彼氏として働いてる理由とか、あの時の桐子さんの言葉はそこに含まれるのかな。
余計なことではない気がするけど、どこまでが貴人さんにとって余計なことかがわからないし、それをポロッと言って貴人さんと桐子さんが揉めても大変だし……。
「……は、はい、言ってなかったです!」
「ってなんだ、その微妙な間は」
貴人さんは、私が考え込んでいた時間をすかさず突っ込む。
するとその時、目の前の信号がパッと青に変わり、信号待ちをしていた沢山の人々が一気にこちらへと歩き出しその場は人であふれた。
「わっ、」
歩きなれない日曜夜の新宿の街は、こんなに人が多いなんて。戸惑ううちに、人波に流されそうになってしまう。
「すみれ」
そんな私に、貴人さんははぐれないように肩を抱いた。
まるで体を抱きしめるような力強い腕。一気に近づく距離に、心臓がバクバクとうるさく鳴る。
は、恥ずかしい……。
必死に歩きながら見上げれば、顔のすぐ上にはまっすぐ前を見て歩く彼の顔がある。
触れそうなほど、近い距離。そんなふうにいきなり近づくから、余計この心はうるさくなるよ。
でも、恥ずかしいけど、この手を離さないでほしい。