午前0時の恋人契約
「この前から言ってるだろ。あいつは客、俺は仕事、それ以上なにもないしありえない。どうなることもない」
なにもない、ありえない。
どうなることもない。
それははっきりと引かれた、客と彼氏という名の線。
「それより忘れてないだろうな、これが終わったらあの条件」
条、件?
それって、もしかして……お金、とか?
そのために、頑張っていた?なにかの条件のために、私の彼氏として?
……そっか。そう、だよね。それが貴人さんの仕事だもん。
キスだって、演出のひとつだ。
そう話しながら、不意に彼の視線は何気なくこちらへと向く。
あ、まずい。そう思うと同時に貴人さんの目は私にとまり、驚いたように貴人さんは電話を切った。
「すみれ!?お前、いつからそこに……」
「す、すみません……」
その慌て方は、『聞かれたくなかった』という様子で、やはり先ほどの話は客である私は聞くべきではなかったのだろうことを知る。