午前0時の恋人契約
逃げるように、ひと気のないフロアを早足で歩く。
そしてフロアの一番端にある女子トイレへと入った瞬間、堰を切ったように涙がボロボロとこぼれ出した。
なんで、こんなに胸が痛いんだろう。
分かってる、分かってた、なのに。
深く踏み込まれたり、後腐れがないようにと、お金を払って彼をレンタルすることを決めたのは私だ。
なのに、すっかり舞い上がって勘違いをしていた。これが恋かもしれない、とか、そんな期待をしていたんだ。
『あいつは客、俺は仕事、それ以上なにもないしありえない。どうなることもない』
……恥ずかしい。
貴人さんにとっては、全部仕事。
いつもは見せてくれない笑顔も、触れる優しさも、心を変えてくれた言葉も、昨夜のキスも。
仕事でしかなくて、私が今以上の立場になることはありえない。
実感すればするほど涙はこぼれて、喉の奥が詰まったように苦しくなる。
だけどその苦しさを感じるほど、自分の本音に気づかされる。
こんなに苦しい理由、こんなに胸が痛む理由。
それはきっと、あなたに恋に落ちていたから。