午前0時の恋人契約
「あと……岬くん、と言ったか」
「は、はい」
呼ばれた名前に、彼の背筋がいっそうピンと伸びる。
「君は君なりにきちんと考えて、この子の想いに応えてほしい。同情や損得ではなく、心に従ってほしい」
同情で頷くのではなく、損得で断るのでもなく、彼の心の思うまま。その心に、答えを委ねる。
そう言って笑った父に、貴人さんは真剣な顔で「はい」頷くと、丁度飲み物のグラスが運ばれてきた。
「ではここからは予定変更で、すみれの普段のことを教えて貰いながらの食事会といこうじゃないか」
「えっ!いや、私のことは……」
グラスを手に笑うお父さんに、貴人さんもグラスを手にとると意地悪く笑う。
「そうですね。じゃあ先日彼女が取引先の前で思い切り転んだ話からしましょうか」
「えぇ!?ちょっと待ってください〜!」
からかうふたりに慌てる私、そう3人で笑いながら音を立てグラスを合わせると、その場には和やかな空気が広がった。
彼が教えてくれた気持ちと生きていきたい。
それが、私にとってまぎれもない本当の気持ち。
隠すことも、嘘をついて、全てなかったことにすることもきっと簡単。
だけどそうじゃない。
父にも、貴人さんにも、聞いてほしいと思ったんだ。