午前0時の恋人契約
「あれからどうだ?すみれとは」
「あ……はい。えーと、……お付き合い、させて頂いてます」
さ、さすがに恋人の親の前で交際宣言をするのは緊張する……!
つーか、俺に聞かないでくれよ!娘に聞けよ!
いや、娘から『彼氏が出来た』と聞く方がダメージは深そうだが……これはこれで、俺のほうが苦しい。
バクバクとする心臓を顔に表さぬように答えた俺に、その顔はおかしそうに笑った。
「はは、すみれの勢いに流されたか?」
「いえ。……ちゃんと、想ってます。彼女のことが大切だから、付き合ってます」
それは、気遣いとか同情とか、流れとか、そんな適当なものではない。想いが、ここにあるから。
「……なら、よかった」
その答えに、見せたのは柔らかな微笑み。
「すみれは母親があれだったからトラウマもあるだろうし、父親の俺も仕事ばかりで満足に構えなかったからな……気付けば、いつも人目を気にしているような子供に育ってしまった。父親失格だ」
親自身も、すみれの性格と原因に気付いていたのだろう。
けれど、家族という近い存在と、自分のせいという負い目もあり、どうにも出来なかったのだと思う。
そんな自分の子供の変化を見たその目は、穏やかで優しい。
「だからこそ、この前自分の気持ちをはっきりと言ってくれたことが嬉しかった。それはきっと、君がいてくれたからなんだろうな」
俺の、おかげ?
いや、きっとそれだけじゃないさ。