午前0時の恋人契約
「……以前、すみれが言ってました。『半年に一度、時間を作ってくれた食事が嬉しかった』と」
「え?」
「あなたの自慢の娘になりたくて、頑張ったのだと」
『自慢の娘になりたかったんです』
父親にとって、誇りになりたい。そう願って努力をしたことも、今の彼女のひとつ。
「俺は、彼女のそんなところにも惹かれたんですよ」
だから、失格だなんて言わないで。
その思いは、きっとちゃんと伝わっている。
「……そうか」
頷いた表情は、嬉しそうな穏やかな笑顔。けれどその目には、少し涙がにじむのが見えた。
話を終え、「また食事でも行こう」とすみれの父親は去って行った。
いくつになっても、本当に娘がかわいいのだろう。そんな姿が微笑ましくて、フロアに向かい歩きながらつい笑みがこぼれる。
「岬課長おはようございます……ってあれ、なんかご機嫌ですか?」
「あぁ、ちょっとな」
そんな俺の顔が珍しいようで、行きあった社員は不思議そうに問いかけた。
それに流すように答えながらフロアに入ると、そこにはすでに出勤し始めている社員たちがいる。
すみれもそろそろ仕事を始めているだろうか、とそのデスクへ目を向ける。