午前0時の恋人契約
「たっ貴人さっ、なっなにをっいきなりっ」
真っ赤な顔でパニックになりながら問う私に、彼はふっと笑う。
「これくらいで意識してちゃ、先が思いやられるな」
「なっ!」
それは『つまり』の言葉の続き。
つまりこれくらいで意識をしていたら、ダメだということだろう。
か、からかわれている……!
ダメといわれても、いきなり触れられればびっくりもするし、意識もする。レンタル彼氏としていろんな女性に触れ慣れている彼とは経験量が違うのだ。
「す、すみませんね……レンタル彼氏さんと違って、経験豊富ではないものですから」
からかわれたことに対し、ちょっと嫌味っぽく返せば、その口元はよりおかしそうに笑う。
「経験豊富じゃない、ねぇ。これだけで耳まで真っ赤にしてるから、てっきり処……」
「わっわー!!!」
って、なんてことを口走ろうとしているの!!
一層顔を赤くして、つい大きな声でその言葉を遮る。今この瞬間も、まだ手は重ねられたままだ。
「で、デリカシーがなさすぎます……」
「はいはい、悪かったよ」
予想通りの反応だったのだろう。真っ赤な顔の私に対して、その顔はしれっとしている。
あぁもう、本当にデリカシーがない。セクハラで訴えたら勝てる気がする。
けど、下手に誤魔化しても彼のような人なら簡単に見破ってしまうだろうし……。
「……か、彼氏が出来たことはあるんです。ひとりだけ。でも大事なのは経験人数じゃないですから、中身ですから」
「ほー。ならそのひとりとは、さぞかしいい恋愛をしたんだろうな」
開き直るように言った言葉に、返された一言。
『いい恋愛』、それについ心は引っかかり返す言葉を見失ってしまう。