ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「結果的に……あくまでも他人目線になっちゃうけどさ。
中谷さんは倉西さんと別れて仕事を続けてる。今は社内報の座談会メンバーに選出されるくらい成功してる。
……それで良かったんじゃないのかな」


身体を屈めて私を探るように見つめる美砂子の視線に、私は曖昧に頷いた。


「うん。……そうだよね」


真に優秀な人材を、事件をきっかけに失わずに済んだ。
今の中谷さんを見ていれば、それで良かったと思うのも普通の感覚だろう。


そして、それが……中谷さんの逆プロポーズをはぐらかした響さんの思惑だったんじゃないか、って思う。


『三十歳になって同じことが言えたらな』


私ですら感じ取れる含みを持たせた拒否。
きっとそれは、中谷さんを止める為だった。


響さんは中谷さんを大切にしていたはずだ。
彼女が結婚に逃げようとして言った訳じゃなかったら、彼女のプロポーズを受け入れたんじゃないかって思う。


中谷さんの犯したミスは、誰にでも起こり得る不運に巻き込まれただけのことだ。
どんなに傷付いたか、泣いたか、それを響さんは一番近くで知ってる。


中谷さんが一番苦しい時に、彼女の一番傍にいた人。


そのはずだった。
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