ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「サンキュ」

「いえ」


響さんは私の隣に一人分の隙間を開けて座った。
そして、湯気を立てるカップを口に運ぶ。


平日の朝のコーヒーにはミルクを入れるけど、休日の朝、響さんが飲むのはブラックだ。
それを覚えてからは、特にミルクを用意しない。
響さんも当たり前にカップを手に取る。


そんな様子を横目で窺いながら、私は意識を無理矢理テレビに向けるしかない。


私の頭の中は、週明けに予定されている座談会のことでいっぱいだった。


中谷さんが自身のミスのことをどう話すか。
そして、それが響さんにどう伝わるか。
それを聞いて響さんがどう思うか。


初めて私がセッティングを任された座談会。
それを目前にして、この週末は嫌でも緊張する。
なのに段取りとか進行とかじゃなくて、私はやっぱり響さんばかりが気になってしまう。


私の隣で、響さんは何も知らずにテレビに視線を向けている。
土曜の朝ならではの、ちょっとしたお出かけスポットを巡る小旅行の様子が放送されている。


晩秋を迎える今だからこそ、風景の美しいスポット。
一瞬自分の現実も忘れて、心が和んだ。


その時。
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