ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
「御馳走様」


響さんは箸を置くと、割とお行儀よく両手を合わせて呟いた。


「いえ。お粗末様です」


誰の胃にも入らない、と思った後だからこそ、響さんが食べてくれたのが嬉しかった。
真っ直ぐ顔を上げて、響さんに笑顔を向ける。
響さんは缶の残りを煽ってから、ガタンと音を立てて立ち上がった。


「あの、響さんっ」


目で追うように顔を上げると、響さんは椅子をテーブルに戻しながらチラッと私に視線を向けた。


「……今度の週末は、お料理してもいいですか?」


必死な顔で真剣に問い掛ける私に、響さんの目がきょとんと丸くなる。
そして、口元を押さえて軽く吹き出すように笑い出した。


「それ、俺に許可取らなきゃ出来ないことなのか?」

「響さんの好きな物作ります。週末くらいは一緒に食事したいです。……ダメですか?」

「はいはい。勝手にしろよ」


響さんは呆れたような口調で軽くそう言って、ヒラヒラと手を振って私に背を向けた。


「先に休むよ。お休み」

「お休みなさい」


リビングを抜けて寝室に入って行く広い背中を黙って見送った。


手元に残ったビールの缶と、響さんが残した缶、そして空っぽの器を見つめる。


なんだか、ほんわかと心があったかくなった。
< 16 / 224 >

この作品をシェア

pagetop