ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
私は顔を俯けて、カアッと熱くなる頬を必死に隠した。
身体に巻き付く響さんの腕から、背中に当たる響さんの胸から、確かに温もりが伝わってくる。


こうしてれば寒くない。
寒くはないけど、あり得ないくらい心臓が打ち鳴ってるのがわかる。


やだ、こんなの絶対に気付かれるっ……!


それだけはなんとか阻止しようと、私はキュウッと自分の身体に力を込めた。
ガチガチに強張った身体に気付いたのか、響さんがフッと耳元で苦笑した。


「何、身体強張らせてるんだよ」

「だ、だって……。こんなに響さんとくっつくの、初めてだしっ……」

「で、緊張してるって言うのか? ……ったく。初めてじゃないだろうが」


呆れたような声が耳元をくすぐる。
まだこれでもかってくらい速い鼓動を意識しながら、私はなんとか聞き返した。


「覚えてないのか? 俺が初めて親父の息子として萌に会った日。
……お前のマンションに空き巣が入ったあの時」


私の記憶を掘り起こそうとする、響さんのちょっと低い声。


そんなの、掘り起こされなくたって思い出せる。
あの時、響さんの姿を見ただけで、私がどんなに安心出来たか。


「俺が誰かもわからないのに、いきなり抱きついて来たのはお前の方だ」

「だ、だってそれはっ……! お義父様から息子さんが来てくれるって聞いてたし。
あの時響さん、私の名前呼んでくれたから、安心して……」

「なのに今はこんな風に俺を警戒するんだ?」

「え……?」


なんだか自嘲気味に聞こえる声に、思わず少し振り返った。
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