ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
遠く鳴り響いた荘厳な鐘の音。
日射しが溢れ返ったチャペル。
余韻の残るパイプオルガンの音色……。


参列者のざわめき。微かな衣擦れの音……。


『デハ、誓いのキスを』


神父さんの声に促されて、向き合った。
ドキドキしながら目を閉じて、一瞬掠った鼻先の感触にビクッと震えて……。
次の瞬間、響さんの唇は私の頬に軽く触れて、そして呆気なく離れて行った。


『誓いのキスを誤魔化すような男と……』


清水さんにはそう言われた。


誤魔化す。
まだその方が良かったかもしれない。


一生の愛を誓うキス。


響さんは、私に愛だけは誓ってくれなかった。
そう感じて、私は自分の置かれた立場に迷走した。


あの瞬間、あの寂しさを忘れられないから……。


『愛されたい』なんて。


そんな直ぐに醒める夢を見るほど、私はおめでたい人間じゃない。
そんなこと願ったら、傷付くだけじゃ終わらない。
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