ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
――……


オフィスから徒歩圏内の、新橋にある料亭。
看板は掛かっていない。
純日本家屋のこのお店は、いわゆる『一見様お断り』の由緒ある料亭で、響さんによると、営業第一部の執行役員部長が秘密の接待に使うとっておきの一つだとか。


それほど広くはないけど、手入れの行き届いた日本庭園が秋らしい雰囲気を漂わせている。
脇道に一本逸れた立地のせいか、とても空気が凛としていて、東京のど真ん中にいるとは思えない静かさだった。


長い廊下を渡って、一番奥まった十畳のお座敷席に通された。


畳みのいい香りがする正方形の和室の真ん中に置かれた黒檀のテーブルが、圧倒的な存在感を放っている。


足を踏み入れた私達は、一瞬にしてシャキッと背筋を伸ばした。


今日は座談会当日。
いつもは営業時間外のお昼時、三時間の予約を受けてくれた。
これも全部響さんのおかげだ。


料亭の女将さんは和服の似合う京美人といった印象。
無理を聞いてくれたことにお礼を言って、早速段取りを打ち合わせる。


今日の座談会スタッフ、撮影担当で二年先輩の錦戸さんと、インタビュアーを任せる一年後輩のなずなちゃんが、私達の会話を聞きながら真剣な顔でメモを取っている。


最初は飲み物で簡単な自己紹介をしてもらって、本題に入る前に和風懐石を振る舞ってもらう。
そして食事を進めながら一時間程座談する。


私は部長決裁印の押された企画書を手に、他の二人とタイムスケジュールを念入りに確認した。
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