ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
怖いぐらいに鳴り響いていた鼓動が、響さんの優しい穏やかなキスで、ゆっくりと凪いでいく。


それでも私は糸の切れたマリオネットのように、ペッタリと床に座り込んで、呆然と虚空を見つめていた。


ほんの一瞬前、優しい温もりをくれたキス。
今、私の身体を巡り巡って、深く深く胸に刻み込まれていく。


「……萌、しばらく俺の実家に帰れ」


唇が離れた途端、その場にしゃがみ込んだ私に、響さんは背を向けながら淡々とそう言った。


「お袋には俺から連絡しておく。……いいな」


たった今、私に『誓い』をくれたとは思えないくらい、素っ気ない声。
一瞬にして不安が過って、


「ど、どうして……?」


私は慌てて響さんを呼び止めて、掠れる声でそう尋ねた。


そんな私から顔を背けたまま、響さんはボソッと小さな声で呟いた。


「……リミッター振り切った。今、俺、萌に何するかわからないから」


ドキッとして何も言えなくなる間に、響さんはドアを開けて廊下に戻って行った。


その背中を呼び止めることも出来ないくらい、私はいっぱいいっぱいで。


ただ、唇に落ちた確かな感触に、心を震わせていた。
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