ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
マンションに辿り着くと、部屋のドアの前で立ち止まった。


あり得ないくらい緊張しているのがわかる。
とにかく落ち着け、と自分に言い聞かせて、私は一度大きく深呼吸した。


意を決してグッと顔を上げて、鍵を差し込む。
玄関に入って響さんの革靴が並んでいるのを見つけて、それだけで少しホッとした。


気持ちばかりが急いて、バタバタと廊下を走ってしまう。
明かりが点いたリビングに駆け込むと、響さんはソファに身を沈めて、こっちに背を向けていた。


濡れた髪。
ラフなVネックシャツとパンツ姿。
いつもと変わらないリラックスタイムの響さんに、私はいつも以上にドキドキしてしまう。


再び緊張が再燃するのを感じながら、後ろ手でリビングのドアを閉めた。
思い切って、響さん、と呼びかけようとした時。


「……なんで帰って来た?」


響さんは私に背を向けたままで遮った。


「俺の実家に帰れって言ったろ」


響さんは私に表情を見せてくれない。
声も素っ気なくて、感情を読み取れない。


私は一度口籠ってから、思い切って顔を上げた。


「だって、ここが私の家だから」


胸を張ってそう答えると、響さんは黙って肩を竦めた。
そんな響さんに、それに、と言葉を続けた。


「……ドアのバーロック、開いたままでした」


感情を探るような私の言葉に、一瞬響さんの肩がピクッと動いた。


「……忘れたんだよ」


さっき以上に素っ気ない返事。
だけど私は、確信していた。
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