ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
過度な気合いは、気負いにも繋がる。


最初は何を作ろうか、と考えた時、彼の好物が何か知らないことに気付いた。
そんな自分が情けなくなった。


それでも、彼の為に料理出来ることにワクワクした。
会社帰りに、タイムセールで混雑するスーパーで、食材を吟味するのも楽しかった。


まだ家具も真新しいダイニングで、二人で向かい合って食事をする。
想像しただけでウキウキして、ドキドキした。


ハネムーンから帰って直ぐだし、ここはやっぱり和食だろう、と決めた。
時間も時間だし、今日は簡単で美味しい物。


メインは鮭の塩焼きで、副菜はお手軽に筑前煮。
お豆腐の味噌汁にご飯、それから箸休めに蕪の浅漬けを即席で作った。


週末はちゃんと準備して、手の込んだ物を作ろう。
それまでにはちゃんと、好きな食べ物も聞き出しておかないと。


そんなことを考えながら、料理を進めた。


そうして全品出来上がってから、かれこれもう二時間……。
ほかほかと湯気を立てていた煮物もお魚も完全に冷めてしまって、ラップに水滴がついている。


横着してテレビも点けないままでいた。


無音のリビングに、カチカチ……と、壁時計の秒針の音が妙に響いて聞こえてくる。
なんとなく目線を上げると、もう午後十時を回っていた。


……遅いな。


無意識に、唇からボソッと声が漏れた。


十月も後半を迎える今なら、いくらか仕事も落ち着いた時期のはず。


何か予定があったかな。
朝は何も言ってなかったけど……。
急な仕事でも入ったのかもしれない。
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