ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
もしかして……。


響さんが私をベッドに運んでくれた……?


それを想像しただけで、ボッと顔が熱くなる。
まさか、お姫様抱っこ……いや、引き摺られただけだ、と必死に思い込もうとした。


ここ数日は気にしないでいられたのに……。
響さんの顔をまともに見ることもなく、こんな風に心臓が騒ぐ事態もなかったのに。


そう思いながら、私は自分の胸に手を当てた。


こんなドキドキは久しぶり。
それはずっと、私が響さんを避け続けたせいだ。


自分が忙しいのをいいことに、朝同じ時間に起きることも避けた。
この数日、まともに顔を合わせず、あの恥ずかしい記憶を忘れてしまいたかった。


そうして思惑通り忘れていられたことに満足していたけど……。
こんなんじゃ、何の意味もない。


ジワッと涙が浮かんで来て、流れる前に手の甲で拭った。
そして、電気を消してもう一度ベッドに潜り込む。


目を閉じる前に、携帯のアラームをちゃんと確認した。


ちゃんと朝起きて、響さんにおはようって言おう。
響さんの為にコーヒーを淹れて、二人で向かい合って飲もう。


奥様として出来ることなんかほとんどないのに。
朝起きて挨拶も出来ない私の存在は、完全に無意味だ。


せめて私に出来ることだけでも、ちゃんと胸張ってこなさないと……。


立派な奥様が遠退いて行く。
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