ウェディングロマンス~誓いのキスはふたりきりで~
何度かモゴモゴとした声が聞こえた後。


「疲れてるみたいだから、無理しなくていいのに」


そう言いながら、響さんがリビングに戻って来る。


それを聞いて少しだけ身体を強張らせて。
私は意を決して、響さんの向かい側に座った。


「無理なんかしてないです」

「仕事、大変みたいだから」

「……昨夜はありがとうございました。響さんが私を部屋に運んでくれたんですよね」


自分のカップに砂糖をひと匙入れながらそう呟くと、一瞬、目線の先で響さんの手が固まった。


「……まあ。放って置いて風邪引かせてもいけないし」

「すみません。ありがとうございました! ……重かったですよね……?」


上目遣いに探りながら聞く私に、響さんがフッと表情を和らげる。


「萌なんか、軽いもんだよ」

「嘘」

「嘘じゃない。むしろもっと肉付いていいくらいだ」

「良くないですっ」


頬を膨らませる私に、ハハッと笑って響さんが顔を上げた。
そうして、正面から目線がぶつかる。
久しぶりに真っ直ぐ顔を見た気がして、ドキッと鼓動が高鳴った。


「……響さん、ごめんなさい」


私の方から目を逸らして、肩を強張らせながらそう言った。
え?と短い返事が返って来る。


「朝……起きれなくて……」

「ああ、そんなこと」


響さんはあっさりと私の言葉を遮って、自分のカップにミルクを注ぎながら呟いた。
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