短編集
水溜まりに張り付いたそれが、なんとも哀しい光景で、拾うためにしゃがもうとする動きが一歩遅れてしまった。

目の前に座っている彼より…。



『あー…。すみませんっ。』


そう言って、彼は、ヘロリとしなってしまった栞を優しく拾い上げ、ポケットから取り出した男物のハンカチでそっと包んだ。


『あっ…いいんです。
気にしないでくださいっ。
ハンカチ…すみません…。』



信号トラブルで緊急停車した車内は、少しずつザワザワしはじめる。


そんな中で私たちは、その紙っぺら一枚にあたふたしていた。
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