短編集
それでも、彼がそこまで分かるほど私を見ていた様子なんてなかったのに…。
妄想に入り込んでいたから気づかなかっただけだろうか。
『とりあえず…ここまでしか拭き取れませんでした。
すみません。
まだ湿ってるから、今日は使えないですかね…。』
彼はそっと立ち上がり、本当に申し訳なさそうに栞を私に差し出した。
『いえっ。十分ですっ。
今日は取り合えず、何かあるもの挟みますから。
こちらこそ、本当にすみません。』
『謝るのは僕の方です。
あなたの大切な栞を…。』