アイザワさんとアイザワさん

「初花ちゃんは、龍叔父さんに事情を聞かれても何があったかなんて口にはしないだろうけど、『何かあった』ことだけでも叔父さんに伝わったら、樹が殴られちゃうかもしれないからね。」


相澤オーナーは大先生や茂之お父さんから私の事情を聞いている。
相澤が私の記憶を無理やりこじ開けたと勘違いしているのかな……と思ったらさっきの曖昧な質問も納得がいくような気がした。


みんな、私がまだ過去と折り合いをつけてないんじゃないかと気にしてくれていたんだ……


「今日初花ちゃんに会って安心したよ。……過去からは抜け出せたみたいだね。」


「はい。相澤……店長が箱を開くきっかけになったことは間違いないですけど、でも、どっちみち限界でしたから。」


今思うと、私が『副店長』になると決めた時点で馨さんと再会するのは避けられない運命だった。
相澤がいない状態で再会していたら……私はあの場で崩れて、駄目になってしまっていたかもしれない。


過去を少しずつ思い出して揺り動いている時だって、頭の隅では相澤のことが気になっていた。どっぷりと過去に浸からなかったことがかえって良かったのかもしれない。
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