アイザワさんとアイザワさん
「何だか瞬先生のほうが『お兄さん』みたいですね。」
と言うと「違うよ。俺は樹の横で要領よく振る舞ってるだけだからね。樹はいつも両親のことで……苦労してきたから。末っ子って要領よくなるもんだろ?そういう意味では、樹のほうが『兄貴』なんだよ。」と瞬先生が言った。
「医師になったのだって『水元』の名前を使ったら苦労しないのに、樹は『相澤』でいたかったみたいだしね。だから、変なアダ名を付けられちゃったんだよ。」
だから、名前にこだわらない彼はもう『若先生』ではないのだろう。
「不器用にしか生きられないから、勘違いされやすくて誤解されやすいんだ。だから、ほんとのあいつを分かってくれる人が側にいてくれたら……樹は救われるんじゃないかって思うんだよ。」
そう言って瞬先生は私のほうを見た。
その存在は私で……いいの?
一緒にいてもいいの?
……また傷つけ合うだけじゃないのかな?
そう思ったけど私が相澤に側にいて欲しい、と感じた気持ちだけは間違いは無かったし、守ってもらっていたと分かった時は嬉しかった。
心の底にしまいこんでいた本当の気持ちに気がつくことができて良かったと思った。
その瞬間、心の中で枯れかけていた想いが再び芽吹いていくような気がした。
……きっと、私はもうすぐこの感情に名前を付けることができる。