アイザワさんとアイザワさん
コンビニからひまわりの咲く空き地へと続く路地を横目に通り過ぎて、おばあちゃんが眠っている墓地も過ぎると、緩やかな登り坂がある住宅地へと出る。
その坂を登りきって右手に見える、黒い瓦屋根の平屋の大きな家が源ちゃんの家。
源ちゃんの家を過ぎて2本目の十字路を右に曲がり突き当たりまで行くと、背の高い木と低い木が夫婦のように寄り添った2本の木がある赤い屋根の家が見えてくる。
その木は2本とも夏みかんの木で、その木がある家が私の家だ。
……帰って来たんだ。5年ぶりに。
いつもこの時期になると、私はおばあちゃんと一緒に夏みかんを収穫した。
私達が『お母さんの木』と呼んでいた少しだけ低い木にはたわわに夏みかんが実ったけれど、隣の『お父さんの木』には一度も実が成らなかった。
おじいちゃんの実家から運んできた苗木は2本とも大きく育ったけど、『お父さん』には羽浦の気候はちょっとだけ合わなかったのだろう。
おばあちゃんが病気になった頃、『お父さん』が定着しなかった家だから、家には父親の存在というものが無いのかもしれない……と皮肉に近い思いを抱いたことを思い出した。