アイザワさんとアイザワさん

「そろそろ、時間だな。行くぞ。」

相澤はそう言うと繋いでいた手をパッと離して会場へ向かって歩き出した。温かな温もりを感じていた手が急に冷えると、心までスッと冷えていくようで、緊張感が増していった。


……とうとう、来てしまった。


ここまで来たら、向き合うしか、ない。


***

足を踏み入れたエリア会議の会場はとても広くて、たくさんの人がいた。

東北地区の店舗の人とエリアマネージャーが全員集まっているのだ。これくらいは混むのは当たり前だった……


私は、人の多さにちょっと安心してしまった。


このままだと馨さんには会わずに済むかもしれない。


……しかし、私の安心は長くは続かなかった。


「あれ?相澤くん。久しぶり!……あれ?初花ちゃん?初花ちゃんじゃない!どうしてここに?」


そう声をかけてきたエリアマネージャーを見て驚いた。


その人の名前は黒瀬(くろせ)さん。仙道さんの前にうちの店のエリアマネージャーだった人で……私に「付き合ってくれ」としつこく言い寄ってきた人だったからだ。


もちろん、その時には馨さんと付き合っていたので、トラブルにならないように馨さんと一緒に「私達、付き合ってますので」と言ってきちんと断ったのだ。
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