理屈抜きの恋
でも分かるよ。
見慣れた私でさえ、あの笑顔には見惚れてしまうんだから、初めて間近に見た細井さんなんて、一瞬で最上くんの虜だ。

「せっかくだからもっと話しをしてみたいです。」

そう言って私の背後から出てきた肉食系の細井さんには結局のところ私の力なんて必要ない。
二人をその場に留め、一人、料理の並ぶテーブルへと向かう。


ビュッフェは少し時間がズレたからだいぶ空いている。

色とりどりの料理に目移りしてしまう。
あれもこれもとお皿に少しずつ取り分けるけど、取りきれない。
とりあえず、取った分だけ食べようと、近くの空いているテーブルの隙間を借りて料理に舌鼓を打つとあまりの美味しさに頬が落ちそうになった。

中でも特にプリプリの伊勢海老が最高に美味しい。
また取りに行こうかな、と伊勢海老の方に目を向けていると、視界の隅に細井さんの派手な髪型が目に入った。

「あれ?どうしたの?もう話終えたの?」

「私も…食事食べようと思って。」

沈んだ様子が気になって最上くんを探してみると、彼のそばには人集りが出来ていた。
細井さんはガッツのある肉食系に見えたけど、さすがに威圧感たっぷりの最上ガールズに囲まれてしまったら入社2年目の新人はでしゃばれないらしい。
< 10 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop