理屈抜きの恋
副社長の就任をあまり良くないと思っているように取られてもおかしくない会話をしていた。
お孫さんの悪口なんて聞くに耐えなかったのだろう。
それを思えばこうして姿を現したことに背筋が凍る思いがする。

『それは答え次第だ。言ってみなさい。』

威圧感のある様子が怖い。
でも後には引けず、意を決し言葉にする。

『団体競技には…』

『団体競技?』

『はい。団体競技には必ずエースが付き物です。エースの活躍は新聞の一面を飾ります。でも、印象に残るかどうかに関して見れば、エースでない人の活躍の方が上だと私は思っています。注目を集めていない人のファインプレーはエースの活躍並み、もしくはそれ以上の価値があると思うので。』

『なるほど。続けて。』

『縁の下の力持ちという言葉がそれに当たるかは分かりませんが、もし、新しい副社長がエースとしての素質のある方なら、鈴木部長のような縁の下の力持ちが活躍することで、きっとエースの活躍以上に上層部の方達の記憶に残ると思いました。』

『相乗効果で会社の質も上がる、か。 』

『すみません。若輩者の勝手な意見です。』

『いや、なかなか面白かったよ。君、名前は?』

『神野撫子です。』
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