理屈抜きの恋
「え?」

「ここか?…それともここか?」

背後から頬や耳にキスをされるその状況に、意識が飛びそうになる。

副社長側に向き直されて、腰を支えてくれなければそのまま崩れてしまったかもしれない。

「他の男になんて触れさせない。絶対に。」

「私も…私以外の女性には触れて欲しくないです。」

前にパーティーで流血騒動になった時、副社長が女性を抱き上げた事があった。
あの姿を見た時、胸が傷んだのは、嫉妬だったのだと今考えれば思う。

最も、すぐに女性を助けてあげた副社長の事は素敵だと思うけど、やっぱり他の女性には触れたりして欲しくない。

副社長は誰にも渡さないと言わんばかりにギュッと副社長に抱きつくと副社長もそれに応えて抱き締めてくれた。

「あーなんで仕事しなきゃいけないんだ!」

「そ、そうですね。」

「もう、今日は仕事止めるか?」

身体が離され、覗き込んできた顔はものすごく色っぽくて、頷きそうになる。
でもそれをなんとか堪えて副社長の身体から離れる。

「だ、だめです!今日は午後から大事な会議があるんですから。」

「じゃあ、会議までは二人だけの時間を過ごそう。」

そう言うと副社長は扉の方へ進み、部屋に内側から鍵を掛けてしまった。

「いやいや、ちょっとおかしいですよ?何をする気ですか?」

「大きな声では言えないな。鵠沼が聞いているかもしれないし。知りたければこっちに来い。」

何だろうと、思って副社長に近づいた私がバカだった。
耳元で聞こえた単語に顔が茹蛸のように赤くなる。

「ここは職場ですっ!節度ある行動をっ!!」

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