理屈抜きの恋
「何だよ。」

「いや、別に。」

「何だよっ!」

そう問い詰めると祖父はさらに笑った。

「そんなに好きなら早い所、手を打て。グズグズしていると誰かに持っていかれるぞ。」

「反対とかしないのか?」

大体、こういう時は『お前には決められた相手がいる』とか『政略結婚』の話になりそうなものなのに。

「反対なんてするものか。ワシが見初めた子なんだから。」

なんだ。
やっぱりその目的もあったんじゃないか。

まぁ、そうだとしても感謝する気持ちは変わらない。

何せ『好きです』と言われてあれほど嬉しい事はなかったから。

いや、それ以前に「好きです」と告白されて、「好きだ」と答え、そして付き合うようになるなんて学生の頃でさえしなかった。

告白されて、その中から適当にタイプの子を選んでお互いの欲求を満たす付き合い方が大半だったから。

もちろん中にはそれを嫌だと言う女性もいた。
そんな関係の中に愛情なんて育たないからと言って。
だから付き合うのは割り切れるような女性ばかり。

でも、彼女たちもいつの間にか変わり、俺に気に入られようと必死になり始める。
まぁ、それに関しては初めのうちは嬉しいと思っていた。
でも女である事をアピールされたり、揉め事になる度、恋愛なんて何の特にもならない、女なんて必要ないと考えるようになっていった。

だから仕事を始めてからは一切の関係を絶ったんだ。

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