理屈抜きの恋
ぺこりと頭を下げると、いつもの柔らかい笑顔が返ってきた。

その1週間振りの笑顔に胸がキュウっとする。
それは真美ちゃんも同じだったようで、エレベーターに乗るなり私の肩を興奮気味に叩いた。

「副社長ってほんと素敵。最後のあの笑顔。もうヤバい!最高じゃん!優しいし。恋をしちゃう撫子の気持ちが分かるわ~。」

そういえば忙しさにかまけて真美ちゃんに報告をするのを忘れていた。

いや、でもあの翌日から副社長は会長に同行して出張に行ってしまい、関係は特別進展しているわけではない。

久しぶりに会った今朝だってお土産を渡されただけ。

だから報告するとしたら告白したこと、副社長も好きだと言ってくれたこと、おかげで気持ちはすっきりして仕事を集中して出来るようになったことくらいだけど、いまいち実感のないこの状態で伝えても良いのだろうか。

「どうかした?」

「あ、ううん。それより真美ちゃんの方こそ突然どうしたの?」

副社長室の鍵を開け、先に入るよう促し、話しを振る。
でも、初の副社長室に興奮気味の真美ちゃんに私の声は届かない。

「うわ~、すごーい!綺麗な部屋ー!調度品も高そうな物ばかり!いいなー、こんな環境で働けて。あ、でもやっぱりあるんだ。イナゴの佃煮。あはは、しかも蜂の子まで増えている~。相変わらずカビは繁殖し放題だし。」

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