理屈抜きの恋
会議の議事録を作り終えたのは21時。
事前に家には遅くなる、と連絡してあるし、明日は休みだ。
あまり食欲はないけど、副社長と一緒に過ごせるのはこんな時でも嬉しい。
1週間会えない間、ふとした瞬間に想うのは副社長のことだったから。
ただ、歩いていく方向にお店らしいお店は見当たらない。
一体どこに向かっているのか、ただ付いて行くだけしかないというのは不安。
道に迷ったような感覚がする。
それでも副社長の後を付いて行くこと20分。
やっとのことで到着したのは何やら立派な和風建築のお屋敷だった。
「あの、ここって料亭か何かですか?」
あまりお高いお店だとお財布の心配をしなくてはならない。
足が自然と止まってしまうと、振り返った副社長が一言「俺の家。」と言った。
「俺の家?あぁ!俺のシリーズは流行りですもんね。でもこのような場所にあったなんて知りませんでした。」
「は?知らなくて当然だろ。俺の家は俺の家だから。」
そのジャイアン的言い方に、本宮家が飲食店経営にまで手を伸ばし初めているのかとその時は本気で思った。
でも、門をくぐり、扉を開け、「ただいま」と言ったことでここがお店ではなく、本当に副社長のご自宅なのだと理解すると、足が竦んで動けなくなる。
「何しているんだよ?早く入れ。」
「いや、あの…ここって本宮家ですよね?」
「そうだ。何度も言わせるな。」