理屈抜きの恋
「いや…あ、あの…こんな風にしていただかなくても、口頭で教えて頂ければやれます。」
「何だ?恥ずかしいのか?」
耳元に息が吹きかかり、甘い声で囁かれると胸がキュウっとなる。
と同時に包丁を持つ手を握りしめると副社長は私の手から包丁を離し、まな板の上に置いた。
「職場じゃなければいい、って言ったのは君の方だろう?」
「それとこれとは…」
別問題、と言おうとした瞬間、クルリと身体を回転させられ、振り向きざまにチュッと唇にキスが落とされた。
「ふ、不意打ちっ!?」
「1週間、我慢したんだ。」
「我慢…って。」
「撫子は俺と離れて寂しくなかった?」
とろけそうな程甘い表情と甘い声色に全身が脈打つ。
「なぁ?寂しくなかったか?」
「し、仕事がありましたから。」
本当は寂しかったし、会いたかったけど、そう伝えるのが恥ずかしくて強がって言ってみせると、「仕事と俺とどっちが大事なんだよ!」と突然怒り出した。
その急な変化に言葉を失ってしまい、呆然と見ていると「フ」っと破顔した。