理屈抜きの恋
でも、そこも外村さんの方は違っていたようで、噂を否定することなく、私との仲は周知の事実であるかのように振る舞うようになった。

別段、外村さんのことは嫌いではなかった。
ただ毎朝、駅で待ち伏せされ、総務課に持ってくる書類に毎回メモを付けては食事やデートに誘ってくる行動には付いていけなかった。

そしてそういったことは時間の経過とととに徐々に心の重りとなっていき、言葉を交わすたびに周りから囁かれる声も加わって、段々と関わることが嫌になっていた。
仕事の話でさえ面と向かうことに抵抗が出来てしまったのはもうとっくに限界に達していたのだと思う。

そんなある日、一人居残って仕事をしていた時、小田先輩が声をかけてくれた。

「こんなに遅くまで仕事?」

私の机の上に置かれた資料をペラペラと捲る。
その興味のなさそうな仕草に、そんな話をしたくて近寄ってきたのではないと思ったけど、会話を合わせる。

「小田先輩はまだ帰らないんですか?」

「もう帰るわ。でもその前にちょっと聞きたい事があるの。」

「なんですか?」

「あなた本当に外村さんと付き合っているの?」

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