理屈抜きの恋
だから私も同じように目の前にいる男性を上から下まで見てみるけど、やっぱり記憶にない。
人の名前と顔を覚えるのは得意な方だし、ましてこれだけ印象的な男性を忘れるはずはないのに。

「なるほど。会長が好みそうな女だ。」

「カイチョウ?」

話しの流れが掴めない、というのは恐ろしい。
物心ついたころから聞きなれているはずの日本語が聞き取れないのだから。

「会長に何をした?色仕掛けか?それとも弱みでも握っているのか?」

少しだけ険しくなった表情に気付かなかったわけではない。
でも、その時はカイチョウが会長の意味だと分かったことの方が先だった。

「会長か!…って、え?会長?」

「君の会社の会長だよ、本宮会長。知らないはずないよな?」

「はい。それはもちろん存じ上げていますが…あの、失礼ですが、本宮会長とはどういったご関係ですか?あと、あなたのお名前を教えていただけませんか?」

ホストは別として、もし仕事の関係者だとしたら、電話対応位の接点はあるかもしれない。
少ない情報の中からそう考えたから名前を聞いたのに。

「今ここで名前を教えるつもりはない。」

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