理屈抜きの恋
「はい?!」
人に名前を聞いておきながら、名前を教えないとは、なんて失礼な人だろう。
イケメンならなんでも許されると思っているのだろうか。
さっきはあまりにも魅惑的な視線に身動きすら取れなくなってしまったけど、それは完全に私の落ち度だ。
このような失礼な男性に惹かれそうになるなんて、どうかしていた。
相手を見る目を変えて男性を見上げる。
すると男性は真剣な表情で私を見返した。
「神野撫子。本性はいつかバレる。話すなら今のうちだ。どうやって会長に取り入った?」
「質問の意図が分かりかねます。私と本宮会長の関係があなたにとって重要ですか?」
「そうでなければこんな風に聞いたりしない。会長はなぜ君のことを知っている?」
「社員だから、ではないですか?」
「あれだけの人数を抱えている大企業だ。いくらなんでも会長が社員全員の名前を把握しているわけないだろ。しかも君のような平社員を、だ。」
そんなことを言われても困る。
というより、むしろその質問は会長に投げかけるべきことではないだろうか。
実際、私が会長と言葉を交わしたことは1度しかないのだから。
それに、例え会長と個人的に関わりがあったとしても、初対面の素性も分からないような相手に話すことなんて出来ない。