理屈抜きの恋
「最上くんと私は付き合っていないし、最上くんを脅したりしていない。そう周りに思われていても、最上くんがそう言ったとしても、それは全て最上くんの自作自演よ。」

「嘘…でしょ?」

「嘘じゃないわ。だって頼まれたんだもの。俺の彼女役を演じてくれ、って。」

「演じるって…小田先輩は最上くんのことが好きなんでしょう?」

「好きよ。だから断れなかった。それが最上くんの幸せに繋がるならそれでいいと思ったし、演技だとしても彼女になれるなんて嬉しかったから。それに最上くんに幸せになって欲しかったの。最上くんが笑っている顔が好きだから。」

膝から崩れ落ちてしまった先輩はその場で顔を両手で覆った。
指の間から零れ落ちる滴の量で、どれ程の強い想いがそこにあるのかが伝わってくる。
そしてどちらが正しいのかも、恋というものがどういう想いで成り立つのかも。

「小田先輩。ごめんなさい。」

謝ることで先輩は完全に崩れてしまった。
床に突っ伏して泣き出す。

「撫子!」

先輩とは反対に誤解が解けたのだと思った最上くんは笑顔で私の名を呼んだ。

でも、それに笑顔で応えることはしない。
肩に置かれている最上くんの手を退け、見上げる。

「最上くん。先に言っておくね。」

「なに?」

「私、最上くんとは付き合えない。ごめんなさい。」

「どうして…?だってさっき、考えてくれるって…」

「うん。確かにさっきは気持ちが揺れた。最上くんが私を想ってくれる、その想いが嬉しかったから。」

「それなら…」

「でも違うの。私は最上くんを愛せない。最上くんの想いも愛情としては受け入れられない。」

「どうしてだよ?なあ、どうしてだよ!先輩の言うことを気にしているのか?!それなら違うって…」
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