理屈抜きの恋
それも違うとまた首を横に振ると、本宮涼は手を差し出してきた。

「立てよ。ここは座る場所じゃないだろ。」

差し出されたのは大きな手。
掴むべきか、断るべきか、じっと見て考えていると、本宮涼は出した手を戻し、しゃがみ込んで視線の高さを合わせてきた。

「やっぱり具合が悪いんじゃないのか?大丈夫か?」

その優しい声と心配そうに私を見る表情に、少しだけドキっとする。
何故だろう。
嫌な感じの人だと思っていたのに。

「おいっ!聞いているのか?」

大きくなった声にハッとして我に返る。

「ぐ、具合は悪くありません。大丈夫です。」

「それなら立てよ。」

先に立ち上がった本宮涼がまた手を差し出してきた。
でも、その手を取るのがなんだか恥ずかしくて急いで自力で立ち上がる。
するとその瞬間、貧血のような立ちくらみが起きて、ふらついてしまった。

「危ないっ。」

そう言って支えてくれなかったら、多分、さらなる悲劇が私を襲っていたと思う。

「すみません。」

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