理屈抜きの恋
「具合悪いなら悪いって正直に言えよ。」

「いえ、本当に大丈夫です。ありがとうございます。」

そう言ってひょこひょこっと裸足のまま壁に凭れる。
そして靴を履こうと試みるけど、いつの間にか腫れ始めていた捻った方の足は高いヒールに対応出来そうになかった。

「なんだ。足が痛いのか。」

「だ、大丈夫です。痛くありません。」

「フッ。その格好じゃ、説得力に欠けるな。」

あ、また笑った。
と同時にまた胸がドキっとする。

「そんなに見るな。人の顔をじっと見るのは癖か?」

話す時は相手の目を見なさい、と幼い頃から言われているけど、決して顔をじっと見つめる癖はない。
ただ、この人と視線を交え、自然体で微笑まれたら視線を外したくても外せないのだ。
しばらく見続けていると、少しだけ顔を赤らめた本宮涼が先に視線を逸らした。

「まあ、いい。それよりお前の荷物はそれだけか?」

「そうですけど、って、ちょっと、何しているんですか?」

肩に掛けてしまった引き出物と鞄を返して貰えるように裸足のまま近づく。

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