理屈抜きの恋
後部座席に乗り込むと同時に副社長が運転手さんに店の名前と住所を伝え、それを聞いた運転手さんが会社からの所要時間をナビで算出した。

「迂回して行けば会場へは30分程で着けます。」

「ではそこへ向かってくれ。」

それを合図に車は走り出す。
でも、どこへ何をしに向かっているのかは店名を聞いただけでは分からない。

「今、向かっているお店は何の為か聞いても良いでしょうか?」

必要があるものなら、朝にでも言ってくれれば先に用意したのに。

でも答えてくれないところを見ると、個人的な用件なのかもしれない。

それなら、と答えを聞くのを諦め、車の座席に深く座り直し、外を眺める。

すると夕焼けが綺麗だった。

夏至に差し掛かろうとしている今の季節は、当然日が延びている。
それでも太陽が出ている時間は限られていて、明るさが姿を消すこの時間帯が一番切なくて一番好きな時間。

薄暗くなっていく様子をぼんやり見て、その切なさに浸っていると、鼻炎の薬が効いたのか、いつの間にか眠っていた。

「おい。起きろ。」

< 72 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop