体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
「そうですね、講師の間でも話題になっていました。素敵な方ですよね」
「でも百合さんは生美さんがお好きなんでしょう?」

話はそれたまま進んでいく。自力で話を軌道修正できないのもおばさんの習性だ。
しかし百合は自分に話がふられてしまったので、しぶしぶ、それた話の軌道に乗った。

「そんな噂が立ってるんですか? 好きですよ。でも憧れです、他のスタッフたちと同様に。生美さんのお花のアレンジはとても素敵ですから」
「でも、百合さんと生美さんならお似合いだわあ」

たとえ愛想でも悪い気はしない。

「生美さんなんて私にとっては雲上人です。でも、そんな風に言われると嬉しいです。そういえば、優さんとあの彼女もお似合いでしたね」
「テレビに一緒に映っていた?」
「ええ、優さんに負ぶってもらっていた女性。羨ましいわ」

ここで敦子が「あの人ね、彼女じゃないんですよ」とにっこり笑った。

このタイミングを敦子は待っていたのだ。

話がそれたかのようで、実はじりじりと自分が秘密を明かす効果的なタイミングを誘導していたのだ。それも無意識にやってのけるところが、長年おしゃべりに時間を費やしてきた、おばさんの侮れない力だ。
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