体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
それから少しの間、ふたりはワインをすすりながら、ただ海を見ていた。

「なあ」

視線は海にやったまま優が声をかける。いつもと違って真面目な口調に不安になる。
優が何を言おうとしているのか、美弥には予想がついた。きっと、ここの所ずっと美弥の心をしめていたことだ。

「なあに?」
とさりげなく、前を向いたまま答えた。

「勉強会さ……」

心臓がキュッとした。予想は当たった。

「もう終わるわね。でも、まだ終わっていないから……。だから、ここにいる間は何も言わないで」

砂浜の上に伸ばした足を組んで、優の顔は見ずに美弥は頼んだ。

なんでそんなことを言うのだろう。
この先も続けたいと言われたら面倒だからなのか。
それとも自分と同じ思い―――終わりを迎えるのが嫌なのか。

父と話しながら整理した自分の気持ちを告げるつもりでいたのに「何も言わないで」と言われ、優は美弥の気持ちを慮った。
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