体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
第12章 美弥の決断
桜が散って若葉が芽吹き、雨が多くなったかと思うと、汗ばむ季節はあっという間にいつしかまたうんざりするほど暑い夏になっていた。
1年前の夏がついこの間のような気もするし、1年よりもずっとずっと昔の出来事だったような気もする。
ただものすごく暑くて、ものすごく熱かったという感触だけが情報として、美弥の中に鮮やかに残っている。
花見以来、たびたび過ごすようになった生美の部屋のテラスからは、桜の木が春のあでやかな姿から衣替えして濃い緑の葉を雄々しく茂らせている。
生美が春から新しく栽培を始めたミニトマトはたくさんの実を付けて、緑のヘタに支えられながら、赤い表面をぴかぴか輝かせていた。
< 295 / 324 >

この作品をシェア

pagetop