体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
美弥はプランターに水やりを終えると、赤いトマトの実に鼻を近づけ、植物の青い香りを吸い込んだ。
朝の8時。
快晴だ。
すでに高い位置から照りつける太陽に手をかざし、美弥は真っ青な空を眺めた。
施設の管理人が地面に水を撒いているのが見える。
ホースから勢いよく飛び散る水が、大きな曲線を描いてきらきら光っていた。

「朝食できた!」

達成感満載の声に振り向くと、髪を乱雑に後ろでひとつにまとめ、Tシャツにスウエット地のハーフパンツを履いた生美が笑ってテーブルを指さしていた。



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