囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
……いや、でもそこまでじゃないか。
花岡さんが、どれくらいの気持ちで及川を狙っていたのかは知らないけど、彼氏がいる上で狙うんだから、そこまでの気持ちじゃないのかな。
それとも、逆だろうか。
彼氏がいるのにも関わらず狙うくらいなんだから本気?
でも、彼氏と別れたあと、及川一本に絞らずに他の人と付き合い出したりもしてるんだし……。
でもでも、と頭を悩ませていると、前に座る手塚先輩が椅子ごと近づいてきて、耳を寄せるようにジェスチャーする。
「やっぱりローンセンターに異動みたいよ、花岡さん」
「え、なんでわかったんですか?」
花岡さんが応接室から出てきたのなんて今の今なのに……と思い驚くと、手塚先輩は電話を指さしながら「貫井代理に内線で聞いた」と答える。
「代理なら事前に知ってるだろうし、花岡さん本人に知らせたあとなら黙ってる必要もないじゃない、だから」
「それにしたってよく聞きましたね……。わざわざ内線でって……」
二列ほどうしろに座る貫井代理も、きっと呆れながら答えたんだろうなぁと思い笑ってから、「あ、でも……」とある事に気付く。
「ローンセンターって東貝沢ですよね? だったら花岡さんの家から近いですよね。ここよりも二十分ちかく通勤時間短縮できるんじゃ……」
「朝の道路の混み方考えれば、もっとじゃない? 花岡さん、普段から遠いだのなんだの文句言ってたんだし、本来なら喜ぶべきところなのにあんな顔してるのって……」
そこまで言った手塚先輩が、視線を営業の島に向ける。
その視線の意味に気付いて、苦笑いを浮かべながら「ですよね、多分」とだけ答えた。