囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
花岡さんの溢れ出る好意を、この支店内で知らない人はいない。……大崎くん以外で。
だから当然、手塚先輩だって気付いているわけで、そして花岡さんの不機嫌の理由を、私と同じように推測したようだった。
ちなみに。
私と及川の事は、支店内どころか同期内でさえ誰にも言っていない。
冷やかされるのが嫌だから……と及川には言ったけど、本当の理由はいつまで続くか分からないし……というものだと言ったら、怒られるのだろうか。
まぁ、そんなこんなで、とりあえずは誰にも内緒でって事で頼んである。
事後報告として、玲奈には言うかもしれないけれど……それもまだ先になるだろう。
及川が例に漏れて私との関係は続いたりして、そしてその付き合いが数ヶ月続いたら、だとか、捨てられたあと気持ちが落ち着いたら、だとか、どちらにしても時間がかかりそうだから。
及川のことは、本気で好きだけど。
好きって気持ちだけで、及川の気持ちが変わらないものだと信じることは、できない。
幸せに浸れない。
これは、同期として及川を見てきた時間の後遺症だろうか。
「花岡さんの送別会、どこかしらね。ボーナス期の目標達成もした事だし、奮発しそうよね」
「温泉に一泊とかですかね」
「まぁ、結局はそれも営業みたいなものだけどね。香白がいいなー」
うちの信用金庫には、温泉街を営業エリアに持つ支店がある。
いくつもの旅館と取引があるから、付き合いとして歓送迎会なんかはその旅館に一泊……という事が一年に数回あるのだけど、今回もそうなる可能性が高そうだった。